中室牧子著『「学力」の経済学』を読んで。子どもはほめて育てるべきか?

本日は最近読んだ本、中室牧子著『「学力」の経済学』の書評を書いてみたいと思います。

 

帯には、
「ゲームは子供に悪影響?」
「教育にはいつ投資すべき?」
「ご褒美で釣るのっていけない?」
と書かれてあり、興味をそそられました。

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「学力」の経済学

「学力」の経済学

 

 誰かの成功体験や主観ではなく、科学的根拠に基づく教育を

この本の特徴は、教育を経済学的に分析しているという点です。著者は子どもは持たず、大学では経済学を教えている教育経済学者です。

教育経済学とは、教育を経済学の理論や手法を用いて分析することを目的としている応用経済学の一分野。

そのため、よくある育児書と違うことは、一人の教育評論家が教育論を語っている訳ではなく、データ、科学的根拠(エビデンス)をもとに結論を導き出しているという点です。そういう意味で非常に説得力があります。ネットやテレビで良いといわれていることが本当に良いのか、逆に悪いといわれることは本当に悪いのかを実験データを元に検証しています。

 

私も4歳の娘を持つ一人の父親として、育児について考えます。普段何気なく行っていることはそのままでいいのか、行動を見直す必要がないか、様々なヒントを与えてくれる内容になっています。

 

相関関係を見るのではなく、因果関係を明らかにすること

相関関係とは・・・?

一方が変われば他方も変わるというような関係。

因果関係とは・・・?

いくつかの事柄の関係において,一方が原因で他方が結果であるというつながりのあること。(Weblio辞書より)

例えば、

「学力が高い児童は、家庭で読書をしているからだ」というのは、

「読書」と「学力が高い」ということに、「相関関係がある」とは言えても、必ずしも「因果関係がある」とは言えません。

 

しかし、多くのメディアなどで、

『「学力を上げるには、読書を多くした方がよい」ということを因果関係のように結論付けて言っている場合が多いことに注意する必要がある』と著者は述べています。

根拠がはっきりしているかどうかが重要であり、そのための科学的根拠=エビデンス(教育での実験結果)に私たちは目を向ける必要があります。例えば上記の場合だと、実際には「子どもに関する親の関心の高さ」に大きな違いがあり、それが「第三の要因」として存在している場合がある、ということがあります。

仕事でもよく頭の中で人の評価を決めつけてしまっていることは多いと感じます。「あいつはいつも○○だから、△△だ」という勝手なイメージは、見えるものも見えなくしてしまう恐れがあります。野生の勘、みないなものもときには必要なのかもしれませんが、できるかぎり、「その根拠は客観的に正しいかどうか?」には常に意識していきたいなと思います。

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子どもはほめて育てるべきなのか?

よく言われることとしては、

「子どもはほめて育てると、自分に自信を持ち、さまざまなことにチャレンジできる子どもに育つ」

ということです。果たして本当にそうなのか?

「自尊心は『結果』に過ぎない」

バウマイスター教授らは、自尊心と学力の関係はあくまで相関関係に過ぎず、因果関係は逆である、つまり学力が高いという「原因」が、自尊心が高いという「結果」をもたらしているのだと結論づけたのです。

学生の自尊心を高めるような介入は、学生たちの成績を決してよくすることはないと示しています。・・・

「やればできるのよ」などといって、むやみやたらに子どもをほめると、実力の伴わないナルシストを育てることになりかねません。

上記を読んで昔、親に言われた言葉を思い出しました。「やればできる」には2つの使い方があると思っていて、

①「やれるだけ思いっきり一生懸命やってみたら、結果でてよかったね。」

②「あなたは、本当はやればできる子なんだから、ちゃんとやりなさいよ。」

①に関しては、まあいいと思うのですが、②はやはり気を付けないとですね。「やればできるのよ」と親から言われて決していい気はしなかったなと今振り返ると思います。いわゆる「あなたは本気出してないだけなんだから、本気出しなさいよ」って言われてもたしかに動機づけにはなりづらい、むしろナルシストを生み出しやすいのだそうです。

 

「能力をほめることは、子どものやる気を蝕む」

子どもをほめるときには、「あなたはやればできるのよ」ではなく、「今日は1時間も勉強できたんだね」「今月は遅刻や欠席が一度もなかったね」と具体的に子供が達成した内容を挙げることが重要です。そうすることによって、さらなる努力を引き出し、難しいことでも挑戦しようとする子どもに育つということがこの研究から得られた知見です。

 私も普段つい、「かしこいねー」って無意識に言っていることはあるかなと思います。そうではなくて具体的にやったこと、努力した行動を見てあげられるように意識していきたいです。

 

最後に

育児や教育は、いつも答えや成果が見えづらいことに向き合っています。良いのか悪いのか、だれも教えくれないので、そのときに考え方のヒントがあると心強いです。

だれかの一部の成功体験だけに捉われず、事実をもとに行動していきたいですね。生きるヒント、育てるヒントを得て、家族で納得いく育児をしていきたいものです。